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2014年11月26日水曜日

クラウドインテグレーターが握る日本のクラウド市場 ~内製化と外部委託の狭間で~

 都内の紅葉を見ながら、今年の秋は気温が下がるのが早かったな、と身を震わせる熊谷です。という訳で少々風邪気味です。
 前回のエントリ「何故クラウドに「運用代行」が必要なのか?」においてクラウドインテグレータについて触れましたが、今日はこのクラウドインテグレータが日本で活性化する意味についての話です。

■「ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国」
 昨年の12月に発刊されました掲題の本があります。
  http://www.amazon.co.jp/dp/4822273784
 著者である元日経BP記者は長年の取材を通して、日本と米国の間におけるIT業務のあり方の違いと、外資系ベンダーが日本市場に入る時に受けるギャップから、日本がどのように海外の技術に「適応」してきたのか、という視点でこの本をまとめています。

 その中で、日本と米国のIT関係市場の違いを明確に表している例として、「「一般企業」と「IT企業(ベンダー・SIer)」のIT技術者数の比率(※)」の日米比較があります。
 日本が25:75(25万5000人:77万1000人)とIT企業が多いのに対して、米国は72:28(236万2000人:94万1000人)と逆転してしまう。つまり米国のIT技術者は、IT企業よりもユーザ企業側に集中していることを現わしています。

 日本の一般企業におけるIT関係業務は、長らく「内製」よりも「外部委託」へと向かう傾向がありました。一般企業がIT関係業務をコストとして考え、その責任を委託できる業者を探すと、当然それを受けるIT企業側の市場ニーズが増えることとなります。IT技術者数の比率はまさにその流れにおける人口動態通りの姿です。
 逆に先進的な技術ベンダーが多い米国などは日本のIT企業よりも技術者数はたしかに多いですが、それよりもはるかに多くの一般企業のIT関係従事者がいます。つまり責任を委託する日本に対して、責任は自社で握る米国の市場の姿を現しています。
 著書の中でも、日本のITベンダーのセミナーが無料なのに対して米国のカンファレンスは有料で参加するという「人に会うための対価」についての違い、日本の重役職訪問は表敬訪問であること対して米国はベンダーとユーザ双方のトップがソリューションの導入効果を直接説明するなど、一般企業側も内製故に責任を伴った行動となる背景がわかります。

 ※出典は『グローバル化を支えるIT人材確保・育成施策に関する調査』報告(IPA(情報処理推進機構)2011年3月)より


■内製文化とパブリッククラウド
 さて、現在日本にも浸透しつつあるパブリッククラウドのコンセプトは米国発のものです。つまり「内製化しやすい」文化から作られた背景が色濃く出ています。
 例えば「従量課金・クレジットカード払い」というのは日本の企業文化では受け入れにくい仕組みですが、「使った分だけ支払う、支払いを自動化できる」という点では合理的であるのは言うまでもありません。その日本でも個人ユーザレベルでみればこの仕組みは喜んで使われています。

 その他にも「スケールアップ・ダウンが自由にできる」という特徴は開発スピードやサービス展開スピードを向上させるために有効ですし、「サービス利用実績が測定できる」点もこれまでのデータセンターサービスではなかなかできなかったことが既にサービスとして組み込まれています。「共有リソース上でのサービス」に難色はあるかもしれませんが、その結果コストが落ちるというメリットを享受できるならば、利用者側のバランス感覚で合目的のシステムを選定すればよいだけです。


■「適応障害」を起こさないためのクラウドインテグレーター
 日本ではIT関係部門は「投資」よりも「コスト」と見られ、アウトソーシングやオフショアの活用方法が課題、という考え方がこの10年ほどで根付いてしまいましたが、この1年でパブリッククラウドに対する興味が大きくわき上がっています。
 とはいえ例えば情報システム部門2~3名という体制でクラウドアカウントを取得したとしても、使い方は一から勉強しなければいけませんし、運用を自動化するにはAPIを理解してコーディングを行わなければいけない。増してやAWSに至っては全て英語のコンソールで表示されてて何のことやら、というものなので、内製の体制がないとクラウドのハードルは意外と高いという状況です。

 目的別で考えれば、このハードルを越えるために大きく2つの方向でクラウドインテグレーター(CIer)を活用することができます。皆様の現場への導入の際に参考としてみてください。

①クラウドをデータセンターの代替手段として
 「システム運用の預け先」としてのパブリッククラウドは、コスト見直しの手段として力を発揮します。床面積や電力量などを考えることなく、サーバ1台あたりの合理的な定価に応じて利用することができます。また利用するリソースに対して使用料を調整できますし、年額契約プランで安定利用に適したサービスを選択することもできます。
 ただデータセンターで用意されている監視プランは通常クラウドサービスの中には十分な機能が用意されていません。CIerはその中に必要な監視サービスや障害発生時の復旧対応というようなオペレーションコストを代行するプランを用意しています。CIerを間に入れるだけで、少人数の情報システム部門でもクラウドの本来のメリットを享受することができます。クレジットカードの支払いを代行することなどは以外と高いハードルを越えるための最もたる例と思います。
 またデータセンターとクラウドは完全にイコールのサービスではありません。例えばOSのサポートが切れたらそのまま塩漬けにする、という延命策はパブリッククラウドではできません。このような移行時を想定するのにも、CIerの協力があることは助けになるでしょう。


②クラウドから新たなシステム企画と戦略投資へ
 従来のシステム開発がハードウェア、ソフトウェア、ネットワークと専門技術が分かれた中で対応しなければならなかったのに対して、クラウドはそれらを一体化することでより集中的にシステム開発を進めることができるようになります。アウトソースよりも内製化にメリットがあると考える企業にとって、クラウドは自社開発部門をより強力な技術力を持つ集団にするための力強い武器になります。
 CIerは多くの開発現場でクラウドをベースとしたシステム開発を行っているので、各種サービスに詳しく設計ノウハウ・運用ノウハウもあります。ただもっと言えば、「クラウドファースト」の考えに沿った開発手法に長けたCIerのような週第と自社開発部門がともに企画・開発を進めることで、現場におけるアジャイル開発のやり方を体感しながら、リーンスタートアップでのサービス立上を実践する、ということのメリットがもっと大きいかもしれません。コンサルティングとセットでクラウドにふさわしい開発手法を学ぶ手段もありますが、CIerとともに企画・開発進めることで現場に新しい経験を受け入れながら実践する方法は、単なるシステム開発技術の向上以上に習得するべき課題の解決につながるとも思われます。

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