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2015年2月2日月曜日

クラウドとイノベーション ~Dockerの動向から考えること~

 最近インフラビジネスについていろいろ調べ続けている熊谷です。
 2014年の後半からクラウドインフラについての話題はDocker界隈の話に興味が集中していました。今日はこの最近話題になっているDockerとそのビジネスについてです。

●「構築」ではなく「移送」を実現するDocker

Dockerは、Docker社が開発するオープンソースのコンテナ型仮想化ソフトウェアです。
 詳しくは多くのIT系ニュースサイトなどで紹介されていますのでここでは述べませんが、このブログで注目したのは「コンテナ型仮想化」をどのようにビジネスとして評価するか、という点です。

 「コンテナ」という用語を見て「また新しいIT技術の概念が出てきたか。。」と辟易とされている方も居られるかもしれませんが、それほど難しいものではありません。
 Dockerの商標となっているクジラのアイコンを見てみると、背中の上に船の荷台のように運ばれている箱、つまりコンテナが見えます。コンテナは運輸・貨物業としてみれば、中に小麦粉が入っていてもコーヒー豆が入っていても、箱になっていれば船から鉄道へ、鉄道からトラックへ、などと自由に乗せ換えて配送先まで運ぶことができるパッケージです。つまり運送基盤が何であってもどこでもコンテナには変わりないから乗せることができる。

 Dockerのコンテナとは正にこのイメージ通りで、基盤が物理サーバでも社内仮想基盤でもパブリッククラウドでも、コンテナとして構築したシステムはどこでも動かすことができるというものです。
 「仮想化」という概念が流行り出した時、「構築した仮想マシンは仮想テンプレートとすればどこでも動く」ということが話題となりましたが、実際には仮想化技術が異なる基盤の間ではP2V、V2Vのようなコンバージョンを行う必要があるため、必ずしても自由な移行を保証するものではありませんでした。その壁をより低くするものがこのDockerです。

●極めて速い展開だったDockerの2014年

そのDockerですが、最初のバージョンが公開されたのが2013年3月、V1.0として商用サポートも含めたバージョンがリリースされたのが2014年6月であり、世に出てからまだ2年も経過していません。
 それでありながら、既に米国大手のベンダーが以下のように今後のサポートをアナウンスしています。
  • (2013/12/4)Google社 がGoogle Compute EngineでDockerサポートを発表
  • (2014/4/17)レッドハット社がDockerコンテナをサポートを発表
  • (2014/4/24)AWSが「AWS Elastic Beanstalk」でDockerサポートを発表
  • (2014/10/16)マイクロソフト社がMicrosoft AzureのDockerサポートと次期Windows ServerでのDocker採用を発表
     (※Dockerは現地点においてWindowsプラットフォームは未対応)

 そして単なるサポートのアナウンスのみならず、Dockerをベースとしたコンテナサービスについても相次いで発表をしています。
  • (2014/11/5)Googleが「Google Container Engine」を発表
  • (2014/11/24)AWSが「Amazon EC2 Container Service」を発表
  • (2014/12/4)IBMが「IBM Containers」を発表。SoftLayerが提供するベアメタルサーバー上で、Dockerを直接起動可能に

 このように大手ベンダーが相次いで発表するほど盛り上がっているDockerですが、注目する点としては、Linuxのみにしか対応していない技術をWindowsでも適用できるようにマイクロソフト社も追随していることだと思います。
 敢えてマイクロソフト社も採用を発表したのは、Dockerの存在によりエンタープライズ系システムのインフラの選択においてWindowsよりもLinuxの方が採用メリットが高くなることを危惧したものと伺えます。コンテナ技術の広がりについての見通しは、マイクロソフト社もそれだけ急いで対応するべきという判断をしているのだと思います。

●開発者が強い米国を映し出すDockerの流れ

そのDockerについての日本国内の動きですが、2014年の後半から勉強会が各所で始まっている模様ですが、大手企業やスタートアップ企業を問わず、日本のIT業界からDockerに絡むインパクトのあるアナウンスはまだ見当たりません。
 一般に米国の市場で発生したIT系のビジネスは日本へ数年遅れて波が来ると言われますが、その法則通りならばDocker廻りでビジネスが進むのはもう少し先なのかもしれません。
 ただその背景にあるのは、以前紹介した日本と米国の技術者の違いに関連しているところもあるように伺えます。

 米国においてはユーザ企業においても開発者が多くて開発を含めた基盤技術も有しているのに対して、日本のユーザ企業のITシステムは外部ベンダーに開発させて少数の社内ITシステム部門で運用管理するケースが多く、よほどの開発力があるユーザ企業でなければ基盤を含めた開発部隊を持つ企業はありません。
 例えば今週東京ではOpenStack Days Tokyo 2015 というOpenStackの大規模なイベントが開催されますが、私の視点では、昨年、一昨年とも参加者はデータセンターなどの従事されている方やインフラ系のベンダー企業の方が多く、ユーザ企業の方の姿はあまり見られませんでした。というのはOpenStackはデータセンターやベンダーとして今後知るべき重要なインフラ技術ですが、開発者のいないユーザ企業がその技術背景を意識する必要性は少ないからです。同じことはDockerについても言えると思います。

 イノベーションは「提供する側」の一方的な思いではなく、「利用する側」とのやり取りにより新たな発想を生み、技術を具現化して、市場を作り出します。革新的な技術も「提供する側」の中だけでの技術である限り日本が米国ほど競争が活発にならないこのような背景があります。それ故に今の日本のユーザ企業においてメリットとなる別のユニークなアプローチを作り出すことが日本のベンダーにとってより重要なことと思います。

 ちなみに国内のDocker関係の動きについては以下のようなニュースも出ています。何より触ってみることに勝る経験はありません。新しい技術に触れた若い技術者の集団から、新しい活動の芽が出てくることにも期待したいと思います。

 東京工科大、学生が「Docker」で手がけた学内システムを全学導入(2015/1/22)
 http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/20150122_684924.html

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