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2015年2月20日金曜日

クラウドと「オルタナティブSI」 ~変化に対応できるしなやかなシステム~

 昔はプログラマーだった熊谷です。改まってこんな自己紹介をしているのは、今日のテーマがシステム構築に関する投稿ということもありまして。
 先日発刊された日経コンピュータ(2/5号)の記事「オルタナティブSI」は、最近目にしたIT系の記事の中でも、日本IT業界の将来を明るくヒントが多く含まれている内容だと思いました。今日はこの話についてです。

●「伝統的なやり方」に挑む新しいSI

このブログで盛んに「クラウドを使うことで物理サーバにない柔軟なインフラ基盤を調達する」という趣旨のことを書いていますが、インフラがクラウドの浸透により柔軟なることがあっても、そもそも日本のIT業界の仕組み自体が硬直化していることの方が根深い問題ともいえます。
 記事にある「伝統的なやり方」をざっと要約すると、どこでも目にしたことのある以下のような姿が・・・
 ユーザはITシステムの予算執行に合わせて投資計画を策定。その内システム構築に関してはITベンダー(SIer)が基本一括請負で受注して構築。
 しかしプロジェクト進行中に要件が変化すると、ユーザ企業とからITベンダーの綱引きが始まる。
 ビジネスの変化に合わせてシステム要件を変えたいが予算を変えられないユーザ側と、費用固定の一括請負では要件追加に抵抗せざるを得ないITベンダー側。
 結果、ITベンダーやその下請けがどこかで赤字を被ることとなり、またユーザ企業もシステムが完成しても結局要件を満たせずに使えないシステムに陥る。どちらかが得をするのではなく両社とも損をする。

 これに対して、新しいSIはこれまでとは異なるアプローチで、システムインテグレーションの世界を正にGame Changeしようとしています。
 挙げられていた5つのパターンが以下のようなもの。


  1. 納品のないSI:
    完成義務を負う一括請負ではなく、納品義務を負わない準委任契約の月次契約で、1週間毎にユーザ企業とのレビューで成果を見せながら必要なシステムを作る
  2. 定額パッケージSI:
    完成物に対してい見積りするのではなく、固定額39万円で開発できる範囲までやる、という考え方で、①と同様に顧客に必要なシステム開発をレビューしながら構築する
  3. 自動生成SI:
    開発全体の大きなボリュームとなるコーディングの工数に比重を置くのではなく、ノンプログラミングで自動的にコードを作るツールを使うことで要件定義に工数を置く
  4. クラウドインフラSI:
    インフラ調達をシステム開発を別々に行わず、システム構築とインフラ調達とクラウドインテグレーターにまとめて依頼し、チューニングを含めたシステム構築を行う
  5. コミュニティSI:
    ユーザ企業が構築したシステムをサービス化して同業他社に展開しながら、他社要件を取り込みながら継続的に改善する。


●「新しいやり方」はプロジェクトの軽量化

これらを「新しいやり方」と呼ぶとすると、新しいやり方の中はこれまでの硬直的な開発プロジェクトをより柔軟に、軽量にするための以下のような共通点があります。


  1. 途中で進捗がわかる:
    どのモデルも1週間単位など短期的に成果を見せることが前提となっており、どこまで何が進んでいるのか進行状況と方向性が見せながら、要件漏れの確認と本来実現したい機能の確認を進めます。
  2. 作り直しができる:
    納品後瑕疵担保期間を経てその後はなにも受け付けない、という成果物優先の従来の請負型では、追加開発や仕様変更のために改めて膨大な時間をかけて見積もり、という無駄な期間が発生します。
    納期はあれど速やかに開発を継続できる点も、現在のIT市場の変化のスピードに耐得るために必要な要素と言えます。
  3. 結果コスト安になる:
    これらモデルの契約形態は準委任契約の形態が主流です。
    一括請負をする場合ITベンダーは様々なリスクを考慮して高めの単価が設定されるケースが多いですが、準委任形態の場合は開発期間に応じた工数などに応じた見積りとなるので、ユーザ側からすると見えないコストを支払っているという疑念が増幅することはありません。
    そもそも前出の定額パッケージISモデルなどは、開発当初に「無償のお試し開発」というクラウドサービスのようなことも行っています。いきなり請負契約をして失敗するようなリスクも大幅に軽減できます。


 アジャイル開発など柔軟で短期的に効率的に開発する手法は内製の現場で広まりつつありますが、受託開発でのビジネス化にこのようなモデルができてくることで、SIer依存が大きい日本でも開発プロジェクトの軽量化が進むように伺えます。

●「ビジョンの共有」から始まる ~ユーザ選択のメリット、多重構造の弊害~

この話の重要な点は、上記に挙げられていた新しいやり方の手法そのものではありません。
 日経コンの記事内にもありましたが、成功の特長として「顧客を選ぶ」という項目があります。
 このようなアプローチをとるITベンダーであることを理解してくれるユーザと進めることでトラブルなく進めることができる、ということです。
 多重請負の一部として本来の顧客に直接届かない仕事をするのではなく、あくまでベンダーとユーザとの直接契約に基づく契約に各社がこだわるのは、中間に介在する組織の存在でITベンダーとしての正確なビジョンが伝わらず、「新しいやり方」の理解を進める弊害となりえるからです。
 そしてそのビジョンを少しでも広げて共感を得るために、多くのベンダーはブログなどを使いながら定期的な情報発信も行っています。

 クラウドのビジネスモデルのレイヤーで見ると、アプリケーション利用(SaaS)、開発基盤(PaaS)、インフラ(IaaS)と、必要なプラットフォームを選択できる幅が広がりつつあります。いずれもSIerにまかせて使うよりも、自分で選択するとよりその効果を実感することができます。
 人任せにせずに「自分で使いたい場面で、柔軟に組み合わせて使う」という考え方が日本のIT市場に広まると、「使っていないIaaS上のサーバは夜間停止して」ということが当然のように行われてくると思います。

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